感覚過敏…或は鈍麻。(その2)

 

爺ぃが彩雲を見かけて、足を止め楽しんでいたとき、通りかかった母子があった。

母親は声を荒げて なんでそんなに嘘ばっかりつくの! と園児くらいの子供を突き飛ばさんばかりの勢いだ。

 

嘘じゃないよ、ほらあそこの雲が綺麗… と指さす先は、多分あの彩雲だ。

なにが綺麗なのよ、どう綺麗なのよ、言ってみなさい!ただの雲じゃない! 叱っているレベルを超えていて、怒鳴り散らしている。

あんたみたいな嘘つきは、もうパパのお祖父さんの処に行かせる!帰ってなんか来ないでよ! と喚き散らしている。

 

さすがに、爺ぃも腹に据えかねた。子供には、あの彩雲の説明は難しいかもしれない…と近寄って声をかけた。

あれは彩雲といって、7色に染まってとても綺麗じゃないですか…と。

すると、振り返った顔がまさしく鬼女の面のよう…こちらをグイと指差して、この嘘つき爺ぃ!あんたまでこの子の肩を持つのか!…狂気の目差し…爺ぃも、思わず後ずさる勢いだ。

 

すると、子供がさっと駆け寄ってきて ねぇ、綺麗だよね?嘘なんかじゃないよね? と爺ぃの上着を掴む。

ママには、綺麗に見えないの。どうして?お爺さんも、綺麗に見えるのに… と。