彩雲に巡り会う…
空の大半が頻りと流れる雲に覆われ、時折霰が墜ちていたが、八つ時を過ぎてから西の空から雲が切れはじめた。
昨日に続いて風は冷たく、冬のコートを着てきたのは正解で、うっかり手を外にだしていると、サッと紫色になる。
動脈が縮んで、酸素が巡っていない。慌ててポケットに突っ込むと、一拍だけ心臓が痛んだ。
ビルに挟まれた東西の通りに、強く陽が射してきて、思わず切り取られた西の空を見る。和紙を千切ったようにほどけた雲の縁が、僅かに七色に染まった。
あぁ彩雲になるなぁ、と足を止める。頭の部分だけ影に入る、誰の歩行の邪魔にもならない場所をさがす。
不思議だが、ほら!こっち!と導かれるように、そのスポットに立てた。
それを待っていたように、ビルに挟まれた空は、太陽の近くは金色に、離れた部分は虹の七色にと瞬く間に染まっていく。
そして呆気なく、雲は流れて彩りは消えた。マスクの下で感嘆のため息をつき、ふと道行く人たちを眺めた。
皆、せかせかと歩いている。爺ぃのように、空を眺める様子もない。スマフォの画面に釘付けで歩いている人も多い。
空を眺めるこの爺ぃは、閑人なのだろうか…美しい彩雲だったのに…