匂い、臭い、におい…(その1)

この冬にもしかして、コロナか?と疑ったことがあった。

37℃を僅かに超えた程度では、風邪やインフルとも判断できない。たった一つ決定的だったのは、サラサラの鼻水があって暫くしてから、鼻からの匂いの判断が妙に心許ない。かといって鼻づまりはしていないのだ。

ただ、常人離れした嗅覚のせいか、口にいれた食べ物の匂いは、殆ど通常と同じくはっきりわかる。

醤油の香り、蜂蜜や黒砂糖の香り、湯を指したインスタント味噌汁の若布の香りも…味ではなくて、咽から鼻へと立ち上って感じる香りは、いつも通りにわかるのだ。

まるでワニ擬き…獲物に近づく時は喉近くにある嗅覚器が、眼などよりよっぽど役立つので、あのように口を開いて襲いかかるという。

はて?自分の嗅覚器は異例の二段構え?

一方鼻腔からは、精油のうちミントとサイプレスとファーの香りが、あやふやになってしまった。ローズマリーやマートルは、シャープさが届いてこない。まさか舐めてみるわけにもいかない。

不思議にラベンダーの香りだけは、クリアに判った。身体が最も求めた香りだったのか…

しかし香りがあやふやでも、呼吸を通じて血液中には入れる。これらの精油の芳香浴は効いて、程なく平熱に戻り嗅覚も戻った…

嗅覚が戻ってから、たった1つ試し忘れていたことに気づいた。精油の香りを鼻からではなくて、深呼吸のように口から吸い込んでみたら、香りが判ったろうか…惜しいことをした。

ところで、嗅覚は戻ったどころではなかった。その後、全ての匂いではないかもしれないが、更に嗅覚が過敏になってしまった。勿論、気がついていないだけで、鈍くなった香りもある可能性はある。

帰宅してエントランスのドアをあけたとたんに、凄まじいニンニク臭にたじろいで気がついた。どこかの部屋で、コロナ撲滅作戦として、ニンニクを食していたのだろうが、まるで摺りおろしニンニクをぶちまけられた感じ…勿論、そんなものは見当たらない。

冬ではエントランス玄関ドアを開けておく訳にもいかず、案の定廊下一杯、ニンニク臭で、数日間憂うつで目眩までした。帰宅直後、ドラキュラ並に溶血に近いことが起きていたのかもしれない。

夏の朝には、エントランスにスプレーされた、芳香添加の殺虫剤の匂いも、頭痛を誘った。多分芳香成分というより、殺虫成分だとは思うが…

う~ん、人外の者か?