明るい月夜

 
満月は明晩だけれど、この街の上空に、
ほぼまんまるなお月さまが、ぷかりぷかりと浮かんできた。

月の周囲は、広く雲がない。
明るく、まあるく、輝いている。

春のおぼろ月ではないし、
冬の鋭いほどに澄みわたった月でもない。

今夜の月は、季節を感じない。
むしろ、優しげに見える。優しげに、でも、その奥にクリアなものを感じる。

なんだろう…?
月の光を浴びて歩きながら、時々月を仰ぎながら、考えていた。


あぁ、お月さまが見ている。
お日さまとは違う、静かな、でも透過するような光に照らされて、
黒塗りされた報告書も、
改竄された資料も、
特定の人物にだけ罪を被せて、自分たちは素知らぬ顔で済まそうとしている、不埒な輩も…

多分、明日の満月で、真実が誰の目にもわかるよう、明白に照らし出されるのか?

何せ、天秤座の満月だったはず。
天秤といえば、エジプトの壁画で、魂と羽根の重さを比べるのに、天秤が描かれている。

審判が下される。

自分たちに都合の悪いことを、全て隠しおおせたと思っている輩の、
全ての穢れが、鎮まりかえった月の光に、くっきりと浮かび上がってくる。万事休す。