秋、だな。

 

十三夜、十五夜十六夜、彼岸と、ほぼ連日の月に照らしてもらった。

毎日、月が昇りはじめる頃には東南の空を含めて、雲に覆われている日が殆どだった。

だが、月が上がるにつれて雲がながれはじめて、深夜近くに人気(ひとけ)のない歩道を、独り歩く爺ぃは、連日30分以上は月光浴をさせてもらった。

夕刻に、あぁ今夜は無理そうだな…という雲になっていても、天中に近くなると短時間ながら月の周囲から、見事に雲が失せるのだった。

 

ほんの1分ばかりのことだったが、切れ切れの雲の狭間から月が顔を覗かせていた時に、2つの雲の重なりでハート型に雲がない場所ができて、そこに円い月が収まった瞬間があった。

一緒、撮影しようかと思いが掠めたが、雲のながれが速く、これは堪能せよということだな…と空を見つめ続けた。

正解だった…数秒後には、雲が完璧なハート型にぬけて、まるでアクセサリーのようにその中心で、明るく輝く月…

あぁ、こんな爺ぃなどにも、こんな偶然のギフトが届くものなのだ…半ば呆然としながら、立ち尽くした。

 

龍さんがねぇ、依怙贔屓してくれるんだよ!…まるるんが心底嬉しそうに、話してくれたことがあったな…