オシドリのつがい(その2)

 

パンを噛じりながら見ていると、また同じパターンが何度か繰り返される。せせらぎの縁まで近寄ると、緑色と黒と茶色が見えて、オシドリの雄だった。

おぉ!今年も来てくれたか…と思わず頷いてしまう。ベンチに戻りパンを噛じりながら、思わず笑みが溢れた。

今年も愛らしい雛に会える期待が、恰も楽しみに待つコンサートのチケットを、予定どおりに手に入れた気分に似ている。

 

それにしても、雌は?…と辺りを見回すが泳いでいる気配もない。

雄が、先ほどからの動作を繰り返しながら、さほど離れていない地点にジリジリ近づいている気がする。もしや…?

再度縁まで近づいて、その移動先の延長に眼を凝らすと…あぁ、やっぱり…地味な羽色の雌がじっとしていた。あれは、求愛のダンスの一種なのか…

ということは、まだカップルが成立していないのだろうか…リュックに荷物をまとめて背負い直して、もう一度、そちらに視線をなげた。

陽は翳って、いつの間にか、中の島で二羽は寄り添って踞っていた。よし、カップル成立だな、今年も雛に会えそうだ。

 

会館近くのサクラは、まだすぐに咲く気配ではなかった。ゆっくり咲いてくれると、うれしいが…