梅原猛氏の訃報

 
隠された十字架 や 神々の流竄 が発表された頃は、名前そのままの猛々しく、烈しい論調だった。

学会(学界)全てを敵にまわしても、俺は事実を突き止め、真実を語るぞ!、と。


後年、自説にも数々の間違いがあったことも認め、
更なる新事実や、新たな説を展開した。

間違っていると気がつけば、過去の自説にあまり執着しない。
ほぼ一匹狼状態になることがあっても、平気の平左な学者だった。


ただ、京都市立の芸術系の大学学長におさまった頃に、少し丸くなった。
あの猛々しさが、少なくとも表面上影を潜めた。

老成された、といえばそうかも知れないが、その頃から暫くの間、著作を読むことから遠ざかっていた。


指折り数えてみたらば、あの過激さの絶頂期から、凡そ半世紀である。


お財布に諫められ、手の届きにくかった著作も随分と文庫になった。

現在は、手に入りにくくなっている本もあるが、
新装版がでたら、是非若い方たちにも読んでほしい。


梅原さんは今生で、思う存分に自説を全て展開しきれただろうか。
ご自身のためにも、我々読者のためにも、是非ともそうであって欲しいものである。


合掌。