家守綺譚と冬虫夏草

 
先日、家守綺譚の最初の章、サルスベリの朗読を夢うつつに聴いた。

そして、冬虫夏草を読んだ時に気がついたことを、まだ記事にしていなかったかもしれないと思った。


家守綺譚のなかで、征四郎が家守する高堂の実家は多分、京都の山科。
征四郎は多分、京都大学(まだ帝大の時代)出身。

ただ、数少ない登場人物は、すべて標準語を話している。
征四郎や、編集社員の山内がどこの生まれなのか、書かれていないのだけれど、
高堂も、隣のおかみさんも、長虫屋の男も、
山寺の和尚も、肉家のおやじも、ダァリアも、である。



一方で、冬虫夏草で征四郎が訪れる土地、
今はダムの底に沈んだ集落の人たちは、土地の言葉を話している。

ダムのために、移転を余儀なくされた人たちの土地の文化の一部としての言葉を、
梨木香歩は、作品の中に残してくれたのだろう。



冬虫夏草に登場する、大学に残って研究を続ける南川と思われる人物を、
家守綺譚のホトトギスの章で見かけたことは、書いたかもしれない。


そして、ダムを造ることになった一端を隣のおかみさんが、リュウノヒゲの章で語っていたのを、最近見つけた。

そういえば、征四郎も冬虫夏草のなかで、頼まれて代理で雨乞いをする(供物を供える)、というシーンもあったっけね。