黒子(くろこ)の九ちゃん…(その2)

 
黒子の九ちゃんは、薄めの柳行李みたいな衣装箱(?)を二つ重ねたのを、
両手で胸の前に抱えて、小走りにやってきます。

小さな金箔や銀箔を川面に浮かべて、ゆっくり流れているのは、天の川みたいですね…多分…

おや、川の畔に女性がソワソワしながら立ってますよ。
あら、永さんの奥さんですね…


九:お待たせしました~
 (箱を丁寧に置いて、うっすら浮かんだ汗を拭う)
奥:あら…、九ちゃん。
  え?どうしたの、その箱…
九:衣装部屋から調達してきました。
  ギリギリなんで、もうほとんど出払っちゃって、奥のほうまで探しまくりましたよぉ…
  ほらね、どうです?
 (衣装箱の蓋を、ちょっと恭しい感じで、ずらす)
奥:え?どうしたの?まさか…これ…
九:織女…織姫さんの衣装ですよ。
  まぁ、豪華絢爛ではないけど、清らかで、綺麗でしょう?
奥:え?まさか、わたしがこれを着るの?
  やだぁ、いいわよ、なんだか恥ずかしいわ…
  織姫さんの衣装なんでしょ?
 (軽く手で押さえて遠慮する仕草…)
九:何言ってんですか!
 (キッと睨んで、蓋を外して置く)
  僕がどれだけ苦労して、衣装部屋から探し出したと思ってるんですか?
  正直言って、争奪戦だったんですからね!
奥:え…あ、そうだったの?ごめんなさいね。
  …でも、今から着替えて間に合うかしら?大丈夫?
 (天の川のほうを、しきりに気にする)
九:もう~!僕を誰だと思ってるんですか?
奥:そりゃあ、知ってるわよ。
  九ちゃん、でしょ?
九:んもぉ!違いますったら!
 (地団駄をふむ)
  この衣装をよく見て下さいよォ!僕は今、黒子なんです!
奥:あ、あら、そうだったわね。
 (奥さんは奥さんで、永さんが今来るか、今来るかと気もそぞろ…)
九:舞台転換、衣装替え、プロフェッショナルなんですよ、黒子の僕は!
  ほら、着るんですか?、着ないんですか?
奥:は、はい!着ます、着せて下さい!

(まだ、続く)