ミスター・ロンリー

 
私が通っていた高校の全日制の下校の音楽が、ミスター・ロンリーだった。
定時制が併設されているので、居残りは厳禁だった。

今でも、多分ジェットストリームは、FMの深夜0:00からやってると思う。
多分リニューアルして、ミスター・ロンリーも違うバージョンが流れていると思うけど…

私が通っていた中学から割りと近い高校だったので、同級生でここの定時制に通う人もいた。
下校の音楽に追い立てられて、クラブでヘトヘトになった体で昇降口に向かうときに、
たまに彼らとすれ違うこともあった。

公立校に通うことが、唯一の親孝行だったような私だったけど、
彼らは働いて、自分と家族の生活を支えつつ、高校生活を送っているのだと思うと、
なんだか申し訳ないような気持ちになった。

いまでも、ミスター・ロンリーを耳にすると、階段ですれ違った彼らを思い出す。
「こんにちわー」と声をかけると、挨拶を返してくれた彼らとは、あれきり会っていない。


高校卒業を間にはさんで、半年ほどの間に両親をなくした私は、
高校の同級生たちとも、違ったペースで生きていくことになった。

何にも財産を残されなかった私は、父の後に母をなくして、強がり半分でこう言い放った。
「一人で生きていかれる身体をもらって、一人で生きていける頭に育ててもらったのが財産よ。」
「ふふん、こればっかりは、相続税がかかんないもんね!」

そう言い放てた自分を、今でもちょっと自慢したい。



今でも、夢に見る光景がある。
夕暮れの、他に誰もいない教室、そうあれは私の5組の教室だ。
その教室に、帰り支度をしている私の姿を、後ろのドアのところから、今の私が見ている。
紺色の制服を着て、長い髪の私は、カバンを抱えあげる。
担任が「なんでお前は、大変なことがあっても笑ってられるんだ?」と問いかけた頃の私。

それは現実のことではなくて、
3年になって私はクラブを退部して、授業が終われば飛んで帰らなければならなくなっていた。
3年になって、ミスター・ロンリーを聞いた日がいったい何日あったろう。

今でも時々、夕暮れが目に入ったとき、私の中で切なくあのインストゥルメンタルが鳴り響く。

追記:

城達也さんの、ジェットストリームのオープニングを見つけました。
 このナレーションがないのが、毎日流れていました。

 ↓ YouTube へと リダイレクト します。

http://jp.youtube.com/watch?v=mPA9Vqjk6P0&feature=related