善知識、善知識魔のこと(その3)

 
善知識は、更に語ります…

「ただ、お前が、その者たちを心底憐れに思うというのなら、素手、丸腰で行きなさい。
お前がこれまでに修行で培ってきた、総ての想いをもって、
その者たちの頑なな心を、解き放ってやりなさい。」
「真っ直ぐに真実を観ることのできる、本当に自由な心に戻してやることだ。
それは、如何なる信仰にも制約されないものだ。」


「それができるというなら、行くことを許そう。
どうだ、お前の修行はそこまで到達できているのか?」

「そこまで修行できているならば、もうわたしの下に留まる必要もあるまい。
わたしのことを、とやかく言う輩のことなど、お前の眼中に置く必要もない。
新しく善知識を求めて、さぁ、はやく旅立ちなさい。」


「今、お前が立ち向かおうとしている輩の言うことに、わたしは耳をかさない。
戯言に耳をかし、心を乱し、行いを誤ることこそ、悪魔の思うつぼではないのか?
そんな魔に操られているようでは、まだまだ修行の途上ではないのか?」


「悪魔は、人を不幸にするのを目的に活動しているわけではない。
悪魔は、一人一人が総て覚悟(=本当のさとり)することを、とても怖れている。
あらゆる手段で、それを阻止しようと躍起になっている。」

「考えてもみるがいい。
人間同士を争わせるきっかけを、悪魔は嘘を交えてバラ撒く。
人間は愚かにも、それを鵜呑みにして直ぐにいさかいを起こす。やがて、収拾のつかない殺生に進展する。
悪魔にとって、こんな楽なことはあるまい。悪魔を悦ばせてどうするのだ。」


「魔は、一人一人の中に棲んでいる。
まず、自分の中のそれを黙らせることだ。黙らないうちは、徹底して無視しなさい。
そして、相手の中の魔が発する戯言に、耳をかしてはならない。増長させるだけだ。」

「忘れるな。わたしとて、魔を黙らせるべく、日々努力しているのだ。
争いごとに力を使うほど、愚かなことはあるまい。
そうではないか?」

さあ、この修行者はどうしたか…
あなたの心に、おまかせします。