てぶくろをかいに

 
先日、ラジオで新美南吉の「てぶくろをかいに」の朗読を聴いた。

この作品は、小学校の高学年の時に、教科書で読んだ。
以前、このブログに書いたことがあったと思う。

作品としては、子供向けなんだろうけれど、解釈は年齢によって変わってくるんじゃないかな。

この作品と並んで「ごんぎつね」も、
低学年の時に教材として取り上げられて、読みはしたけど、
大人になってから再度読んだ時、
南吉は、何が言いたかったのか、ますます疑問を抱いた。

「てぶくろをかいに」もそうだ。


でも、朗読を聴いた時は、それがラジオという音だけのせいか、
南吉の示すシーンのひとつひとつが、鮮明に目に浮かんだ。

冷たくて痛くなってしまった、子ぎつねのお手々。暖めてやる、母ぎつね。

子ぎつねが、帽子屋を探しながら歩く、街の夜道の風景。

間違えて、きつねのままのお手々を出してしまったけれど、
てぶくろを売って貰えた、雪原の帰り道の風景。


南吉はすべての人たちに、謎々を出したのかもしれない。
正解がひとつではない、命題。

正解は、ひとりひとりの中にあって、どんな回答も間違ってはいないかもしれない。


そんな問題と一緒に、南吉は私たちに素敵な風景を提示してくれた。

雪原に落ちる影がコバルト色だという、なんて美しい表現なの!