二人の遮那

 
前回の続きで、本と関係ないんだけど、ちょっとここで遮那について書きます。

平安京を定着させた遮那と、政治を平安京から引き離した遮那、二人の遮那のことです。


日本に正式な形の密教を伝来させた1200年記念で、空海(弘法さん)が注目されました。

南無大師遍照金剛と唱える、遍照金剛って、大日如来さんのことです。

由来をご存知の方も多いと思いますけど、
中国の青龍寺で、金剛界胎蔵界、そして伝法の灌頂を受けた時に、
確か両界の灌頂の時の投華で、2回とも大日如来さんのところに華が落ちたそうです。

投華が落ちたその仏さまが、その人の守護佛となるわけなんです。

なので、師の恵果和尚から、遍照金剛と名乗るようにと。

例え政治の中心ではない時期があったにせよ、その後明治にいたるまで、
帝のおわす場所としての京都、平安京を安定させたのは、空海の霊力だという人もいます。
私が言う、平安京を定着させた遮那とは、弘法さんです。



でも、政治の中心を平安京から引き離したもう一人の遮那。
私は、この本を眺めていて不意に、そして初めて気がつきました。
平家を破り、源氏に実権を掌握させた、その人。

鞍馬山で、天狗から剣を学んだあの遮那王源義経です。
実際の政権に携わらなかったという点では、弘法さんと一緒ですが、
彼は、悲劇的な末路を辿ることになります。


平泉中尊寺に、小さな一字金輪の像がありますよね。
確か、切手の図柄でおなじみです。
金剛界大日如来と同じ、忍者みたいな印を結んでます。

政治の中心を、京から鎌倉へと移動させた功労者であった彼は、
都から落ちのびて、一字金輪王の姿を借りて、平泉に眠るのです。