ある、夏のおもいで

 
まるるんは以前、すでに母はいないのに、
母の実家に1年に何度も泊りがけで遊びに行っていた。

お目当ては、犬と行くワンダリング… 
お散歩というには、凄い距離なの。 
このおかげで、まるるんは多分土地の人も知らないような、
素敵な思いをたくさんさせてもらった。


私は車酔いするので、車で遊びに連れて行かれるのは苦手。
従姉が飼ってる2匹のワンコたちをボディガード(?)に、
今は、もうなくなってしまった、ほんとは営林署の管轄の山の中を、
ウロウロと歩きまわるのが、大好きだったの。

ワンコたちも、まるるんが来ると、
ひがな一日、かつ連日、出かけられるし、
里を離れて山の中では引き綱もはずされるんで、
まるるんを大歓迎してくれた。



でも今日は、従姉とそのうちの1匹と一緒にお出かけしたお話。
(もう1匹は車に乗せようとすると、脱走するくらい嫌がるの)

浅間山に登っていく途中に浅間山荘(あ、事件のあったほうじゃないよ)
そこまで、車に乗せられて、そこから右に浅間山、左に三方ヶ峰の、湯の平まで登る。
ここから、浅間山を右に見て、Jバンドを経て、こんどはさっき歩いた場所を左下に、
左手に浅間を見ながら、トーミの頭まで尾根を歩く。

湯の平は高山植物がいっぱいなんだけど、トーミの頭から草すべりを通って、
朝登った場所までゆっくり下っていった。
蛇行した踏み跡を頼りに、お花の中を下っていくの。
そんなに丈のある植物じゃないから、せいぜい足元くらいしか埋もれてないんだけどね、
でも、高山植物の中を歩くのよ。ふわふわ、浮遊してるみたいな気持ち。

きれいだった。臨死体験した人が、綺麗なお花畑に中を歩いていく話をしてるけど、
きっとあんなふうだよ。まるるんは、下ってるんだけど、天にも登る気持ちだったよ。

いまでも、思い出すよ。
まだ成犬になりきってなくて、従姉の足元で甘えてるワンコ。
ほんとに色とりどりの花、明るい風、風に吹かれるとね、花が光るんだよ。
日焼けするほどなのに包み込むような光、人里にはない空気の匂い。

この思い出はね、まるるんの宝物のベスト10にランクインしています。


このころには、高山植物に限らず、随分花の名前も憶えたよ。
ハクサンフウロ、グンナイフウロ、ワレモコウ、ヤナギラン、ツリフネソウ、
ホタルカズラ、キバナシャクナゲ、マイズルソウ、シラタマノキ、
ヤマユリ、オオヤマボクチ、コウヤボウキ、ウグイスカグラ、ヒメシャジン、
英単語が覚えられなかった脳にも、花の名前は、入っていったね。
不思議???


高原は、もう秋風がふいてるね。
まるるんの記憶の中で、ワレモコウが風にゆれてるよ。