例祭の代わり、花手水始まる

 

昼に旧運河に面した神社の前を通りかかると、神社の周りだけに例祭の幟がはためいていた。今年の寂しい風景ではある。

 

鳥居からのぞくと、拝殿の手前側の賽銭箱の上の屋根からさがっているのは、いつもの白い幕ではなくて、まさしく正装の紫の幕。あぁ…そうだ、花手水のはず…と鳥居を潜ると、前回より良い意味ですっきり、暑苦しく見えないように配慮してデザインしたか…

 

前回は手水の水面に、龍の口から水が落ちる場所以外は、ぎっしりと花があった。

今回は水面がある程度のぞくように、余裕をもった量で浮かんでいる一方、奥に霞み草よりは大きいが、軽やかな花を細やかな葉と共に、ベールのように縦方向に纏っていて、涼しげ且つ立体的だ。

 

顔の辺りに、ふんわりと花のベールを纏った龍が、僅かに頬を赤らめて、この爺ぃにだけ打ち明けるように呟く…

 

や〜綺麗にしてくれるのは、とっても嬉しいんだけどさ…それにおいらじゃなくて、花を撮ってるのはわかってるんだけどさ…てっ、照れるぜっ!

 

爺ぃは手を浄めつつ、マスクの中で笑いを堪えた。手水舎の龍が照れるなんぞ、そうそうお目にかかることがなさそうな、楽しいシーンだ。