カラスに話しかけられた…?(その3)
あまりの暑さに、水を求めてやってきたのか…だが、水のオブジェは撤去されてしまった。
――ああ、あれはもう…無くなってしまったんだよ…
――えぇっ…!
カラスの脚が、僅かに鑪を踏んだように見えて、身体が揺れた。全身黒いのだから、よっぽど暑かろう…可哀想に…
カラスは暫く呆然としていたように見えた…そして、何だかどんどんと項垂れていくようで、此方までつらくなってきた。どうにかしてやりたい…
そして、脳裡に浮かんだのはこの駅から見て各々、東側にある旧い運河、北西のオシドリ池の大学、南西にあるオシドリ池の大学の植物園、その東にはこの街のランドマークの一つで前庭に大きな池…
虚空を見詰めて、ありありとその一つ一つの風景を、空のスクリーンに映していると、視線を感じて我にかえった。
カラスがうって変わった穏やかな表情で此方を見ている…小さく頷いているようにも見えた。え?…何に頷いているのだろう。あぁぁおぉぉぉぉ、また微かに啼いた。
――あのぉ…ありがとうね、尋ねたことに答えてくれて…他の水場も教えてくれて…行ってみるね。誰も応えても、相手にしてもくれなくて、悲しかったの…ありがとうね…